秘密の地図を描こう
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目の前にパーソナルカラーのウィンダムが現れた。その動きにいやと言うほど見覚えがある。
「キラ?」
どうする、とラウは問いかけた。自分の位置よりも彼の方が対処しやすいのだ。結局は彼に手間をかけさせてしまうか、と相手にいらだちも感じてしまう。
『落とします』
即座にキラは言い返してくる。
「わかった。任せるよ」
ちゃんと拾うから、とラウは答えを返す。
『お願いします』
キラは即座にそう言い返してくる。
「任せておきなさい」
確実に拾っておく、と告げる彼に、キラは小さく「お願いします」と言い返してきた。
そのまま、彼はフリーダムの速度を上げる。
「直球勝負だね、キラ」
その先には、あのウィンダムがいた。
とっさに回避行動をとろうとしたようだが、量産機ではフリーダムにかなわないらしい。
「あの男の癖を、あの子もよく知っているからね」
そうなれば、どちらの方が有利かわかりきっている。
実際、勝負は一撃で決まった。
推進力をそがれたウィンダムはそのまま落下していく。
「容赦ないね、こういう時の君は」
苦笑とともにラウは呟く。
「さて、拾いに行くか」
あれを、と付け加えたときだ。
『クルーゼ殿。あの機のパイロットは我々が確保します』
オーブのパイロットからこんな通信が届く。
「……申し訳ないが、頼む」
彼を確保する手間が省ければ、それだけキラのフォローに回れる。
『了解です。ですから、キラ様をお願いします』
この言葉に、彼は苦笑を浮かべた。
「おやおや。あの子はどこに行っても人気者だ」
自分も気を抜けないね、と 続ける。
だからといって、今のポジションを誰かに渡すつもりはない。
「それがお前でもだ、ムウ」
かつて、彼の一番そばにいたかもしれない人物。
だが、その座はすでに自分のものだ。
「あの子が私を拾ったのだから、あきらめてもらおう」
自分を止められる場所にいなかったことを、と呟く。
「もう一人の要注意人物が姿を見せたようだね」
あちらはバルトフェルドが対処してくれると言っていたが……と心の中だけで付け加える。
「まぁ、任せておくしかないだろうね」
彼ならば間違いないだろう。
「それよりも、キラの方だ」
あれは落とされたが、まだ他にもいる。
何よりも問題なのは、あの巨大MSの動きだ。
「……どうやら、あれを落とされたせいでかなり動揺しているようだね」
と言うことは、あれのパイロットはあの二人と同じ存在なのだろう。
「あの子達との約束だからね。必ず連れ帰ると」
そのためにも、キラにはがんばってもらわなければいけない。しかし、逆に言えば、あの子に負担をかけると言うことだ。
「困ったものだね」
どんなフォローをすればいいものか。そう呟く。
「とりあえず、少しでもあれの砲をつぶしておくか」
言葉とともにバックアップユニットから度ラクーンを射出する。
「さて……どこまで使えるかな?」
だが、使いこなさなければいけない。そう呟くと、フリーダムの動きを援護するようにそれをあのMSへと発進させた。